自民移動政調会にて 提 言


    
               
          *****提言の内容*****

 こんにちは、合併したばかりの、いなべ市北勢町阿下喜に住んでおります
安藤たみよと申します。専業ではありませんが、主婦でございます。

 私は、2年前に北勢線の全線存続をめざして阿下喜駅を残す会という市民団体を
立ち上げて、存続運動を展開してまいりました。
 幸いにして、桑名市長さんをはじめとする沿線町長さんと議会の賛同を得る事が
できまして、存続そのものは成し遂げる事ができましたので、北勢線とまち育みを考
える会ASITAを結成し活動をしていこうと思っています。
 また、存続の際には自民党の元運輸大臣川崎二郎先生には大変お世話になりまし
た。この度、国の補助金もいただけることとなり、この場をお借りしまして御礼申し
上げます。

 さて、それではなぜ北勢線を残そうとしたのかを聞いていただきたいと思います。
それは鉄道というものが、単に道路やバス交通には置き換える事のできない、地域の
背骨であること、山と海が川によって循環の輪を保ってきたように、町と町、人々の
日常生活を超えた、心の結び付き維持してきたライフラインととらえることができた
ことに他なりません。
 存続運動の間に本当に色んな方に出会い、さまざまな他の市民運動家や学識経験者
の皆さんと交流を持つ事ができました。JR東海の須田会長様から鉄道ファンのグ
ループまで、今までの私の人生からは、まったく無縁の世界の方達ばかりでした。

 存続決定直後の1昨年9月15日桑名市民ホールでシンポジウムを開催したときに
講演をお願いしたのが須田会長様でした。会長は産業観光という新しい観光交流の、
考え方をお示しになって、北勢線がオンリ−ワンとしてもっている産業遺産としての
価値、日本の近代化を地方の自治、地方の主権から支えてきた都市間軽便鉄道の最後
の1本であることを前面に押し出した、アピールをするべきだと話して下さいました。

 同じ壇上で私も、生まれて始めてパネリストとして話をさせていただきましたが、
その時パネルディスカッションに参加されたのが、世界的な大規模な橋の設計者で
あります中村裕司さんでした。桑名市生まれで四日市高校出身の中村さんが
故郷の問題だとボランティアで参加して下さったのです。
 中村さんから私はこの提言での主題である「まち育み」という発想を教えていただ
きました。私が生まれ育ってきたこれまでの時代は、ひたすら物を造り、消費し続け
てきた、物づくり町づくりの世紀だったと思います。員弁の町々は桑名四日市をめざ
し、桑名は名古屋を、名古屋は東京をめざす。日本全体がアメリカ型の都会と
その象徴であるモータリゼーション、車社会を理想として進んできたのだと思います。
 ところがここへ来てその先に見えてきたのが町の空洞化と地域社会の崩壊でした。
地方の生きる道はリトル東京をめざすのではなく、その地方が長い歴史の中で育んで
きた、地域アイデンティティーを大切にした、人間の大きさと速度で生きてい
けるコンパクトな町を維持していかなければならない事に私は気づいたのです。

 今日本中で昭和30年代へ懐かしさといとおしさを込めて、回帰しようとする流れが
出てきました。それは人の顔が見える、肌のぬくもりが伝わる関係を人々が求めだし
たからだと思います。それがこれからの日本の地方を育む本流の考え方だと確信して
います。歴史を大切にするヨーロッパ諸国では、中世から保たれてきた
中小都市の交流装置としてLRT(ライトレールトランジット)が古い石造りの町並
のなかで人々を運んでいます。そこでは自動車は都心に入れず、トランジットモール
が形成されているそうです。正に人間復権のルネッサンスといえるでしょう。
  先ほどのパネルディスカッションのもう一人のパネリストであった三岐鉄道の日比社
長様は、鉄道会社は町づくりまでは考えて経営する事はできない、それは皆さん市民
の、沿線住民の権利と責任の領域だと言われました。
 鉄道会社には町づくり、やまち育みはできません。当然の事です。それでは、行政
だけでそれが出来るかというと、彼らには他のまちづくりの模倣しかできなかったこと
が、画一的な個性のない、どこにでもある路面店だらけの地方を造ってしまった今の
状況から証明できます。

 公(おおやけ)とは何でしょうか。それは官(行政)のことだと短絡的に思われがち
ですが公とは実は、民(人々)の総意のことをさすのだとも教わりました。
 そこでは公益の獲得も方向性への決定も市民がなすべきであるという民主主義の基本が
語られていました。

 自民党政調会の皆様にお願いします。是非私達市民の意思と願いを優先した政策が
地方行政のシステムとして正常に働くような協働体制を構築するよう、地方を御指導
下さい。どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。



ASITA(北勢線とまち育みを考える会) Email